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  • 執筆者の写真wa-vegan編集部

ヴィーガン料理の世界大会「ベジタリアン・チャンス」で日本人初優勝した上田悟シェフ

更新日:2021年6月25日

2019年に日本人として初めて、ヴィーガン料理の世界大会「ベジタリアン・チャンス」で優勝した上田悟シェフ。10年以上もイタリアで挑戦を続けている彼が休暇で2年ぶりに帰国したと聞きつけて、2018年同大会準優勝者の本道佳子シェフと一緒にインタビューをしてきました。イタリアと日本の食にまつわる違い、野菜料理としてのヴィーガンについてなど、お二人にしかできない対談となりました。


本道:ベジタリアンチャンスでの優勝、おめでとうございます。


上田:ありがとうございます。本道さんからいろんな方へ知らせていただいて、出会いが大切だと思いました。


本道:上田シェフのお皿を見たら、さらっと作っているところがいいんだろうなと思いました。


上田:テーマのひとつが「地産地消」で、技術はいろいろな国のものを使いましたが、食材は近所の八百屋や裏山に自然に生えている「ほうれん草」を使ったりしたので、そういうことが審査員の心に響いたのかなと思います。


グランプリをとった後の生活や考え方

上田:改めて、ヴィーガンに対する意識は少し高まったかもしれないです。以前はビーガンについて深くは知らず、そんななかで「ベジタリアン・チャンス」にあえてチャレンジしてみようと出場したので。ヴィーガンはひとつのジャンルとして確立していますから、向き合っていかなければと思います。料理としては、一番難しいかもしれないですね。


本道:私も最初は難しいなと思ったんですけど、頭の体操だなと思ってきて。「なぞなぞ」みたいな……このごろ楽しいんですよね。


上田:新しいことを考えてるときが、一番わくわくしているかもしれないです。


上田シェフが熊本からイタリアへ行った経緯

上田:専門学校を卒業して大阪の町場のイタリアンで2年くらい働いたんですが、そこから東京へ行くか、イタリアへ行くか迷っていたんです。当時の勤め先のシェフがイタリアから帰ってきたばかりで、話を聞いていたら好奇心が湧いてきて、ぱっと決めました。


本道:イタリアに知り合いはいたんですか?


上田:いいえ、学校に入学しました。留学のようなかたちで、1年間はお店で研修生として働きながら、語学学校にも行くという感じで。それで1年経ったあとに研修をしていたお店のオーナーから声をかけていただきました。


トリノの店からクールマイヨールの店に移った経緯

上田:オーナーが年配の方で、2年後には僕たちにお店を任せてくれるという話がすごいおもしろいなと思いまして。トリノのお店もすごい魅力的でしたが、十数年働いて「このお店の流れはわかったかな」と感じていたので、次のステップに行くのもいいなと思いまして。


本道:お店を任せてもらえたら、もっともっと好きなことができそうですね。去年も「お店に行きますね」とお話してたんですけど……。


上田:お話してたのが、一番感染が広がっていた時期でしたよね。僕も日本へ帰ろうと思っていたんですけど、それも無理でした。


イタリアのパンデミックについて

上田:外出が基本的に禁止だったので、家に籠もっていました。いま住んでいるところの上がお店なので、ずっとキッチンにいて、自然酵母からおこしてパンを焼いたりしていました。時間はうまく使えてましたが、ロックダウンが3回も続くと精神的に「いつまで続くんだろう」みたいな感じで。ただ、ワクチンも広まってきて、やっと落ち着きだしているのかなと思います。


本道:お店でご飯を食べてもいいようになってきましたか。


上田:時間の制限はありますが、店内で飲食もできるようになってきました。


日本と海外(イタリア)のお店について

上田:日本は縦社会なイメージがありますが、イタリアは若い人もガンガン意見を出すので、日本よりも意見のぶつかりあいは多いと思います。僕も外国人で上にいる立場だったので陰口なども聞こえてはいたんですけど、そういう声を納得させるには技術や仕事で見せていくしかないので。


本道:日本は上から言われたら、「はい」というしかないものね。笑


イタリアから見る日本食や日本の食文化の良さ

上田 2年ぶりに帰ってきて和食を食べると、いくらでも食べられるんです。優しい味というか、旨味や素材の味が引き立っている。僕が日本人だからというのもあるかもしれませんが、暖かくなりますよね。もちろんイタリアにもそういう面はありますが、チーズやバターなどでパンチがあるので、ずっとは食べてはいられないです。


イタリアで人気の野菜について

上田:根菜が多いかもしれません。ビーツだったり、菊芋だったり。


本道:私は、アーティーチョークやフィノッキオのイメージがあります。


上田:そうですね。冬場はそのあたりがおいしいです。


本道:日本だと菊芋は味噌漬けや天ぷらとか、みんなそんな感じになっちゃうんですよね。


上田:菊芋はチップにしたり、スープにしたりします。土臭い野菜はトリュフと合うんですよ。意外とコーヒーと合ったり。ビーツをピューレ状にしてコーヒーで伸ばして……というのを一度やりました。


本道:個性があるものは、個性があるものと合わせるんですね。


いま注目している食材について

本道:ニュートリショナルイーストっていうヴィーガンの人たちがチーズの代わりとして使うパウダーのようなものがあるんですが、それはイタリアが一番おいしいです。


上田:へー、聞いたことなかったです。そういう粉があるんですか。


本道:カシューナッツみたいなのを前日から水に入れておいて、次の日に水気を取ってフードプロセッサーにかけてニュートリショナルイーストを入れるとチーズみたいになるんです。


上田:まだいろいろな食材があるんですね。


本道:日本では、おからこんにゃくっていうのがあって。こんにゃくのなかにおからが入ってるんですよ。それをパン粉とつけて揚げるとカツみたいになります。


イタリアのヴィーガン・ブーム、野菜料理について

上田:オートミールでハンバーガーを作ったりとか、ヴィーガン食をインスタにあげることがオシャレみたいな風潮はイタリアにもありますね。よくよく聞くと「チーズは大丈夫」とか、深くこだわりを持たない人のほうが多いかもしれません。


本道:今後はもう世界でも「ヴィーガン」とあまり言わないようになるかなと思っています。


上田:そうですね。もう「ヴィーガン」とは言わず、肉料理・魚料理と並んで「野菜料理」になっていくのかなと思います。今のお店もアラカルトのメニューを作るときも、どなたでも食べられる料理として、野菜料理のお皿は常に一つはいれています。


イタリア人のオーガニックに対する意識について

上田:高いですね。いま働いているお店も、置いているワインはすべてオーガニックワイン(ビオワイン)です。お店で畑を持ったりして、野菜やお肉もこだわっています。以前の職場でも、オーガニックには力を入れてましたね。


日本の発酵技術について

上田:発酵はひとつの技術として流行していますし、発酵だけでうま味がぐっと増すので、海外でも教えてあげたいですよね。


本道:これからは菌類な気がするんですよね。その次は粘菌類。粘菌類が地上にあるからきのこが生えるわけで、これからは粘菌類が来るんじゃないかって。「地上にある一番大きい生き物は粘菌類じゃないか」って仮説を勝手に立てているんです。笑


日本への帰国予定と今後について

上田:そうですね。お店を任せてもらえるようになって、足元を固めてから、いつか熊本に恩返しできたらという思いはあります。まだ漠然とした考えですが。


本道:今日はお忙しいなかありがとうございました。会えてよかったぁ。

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